概要
美幌町柏ケ丘公園に残る。網走川に面する台地上であり、大勢力であった美幌アイヌの聖地とも、中心地ともされるチャシ。別名《チルラトイ(我らが運んだ土)》や《ツルライエ(盛り土した)》などと呼ばれ、丘自体が人工であるとされ、割石を粘土で練り上げたものであるという。
(登城日:2019/8/24 それ以降に状況は変わっている可能性があります。)
Ⅰ 所在地等
北海道網走郡美幌町
Ⅱ 種別・利用法
丘頂式チャシ。聖地、見張り台など説あり。
ⅢⅣ 築城時期・築城者
不明
Ⅵ 遺構
チャシ本体。丘そのものが人工であるとされる。
Ⅶ 公共交通機関アクセス
美幌駅から2.5kmほど、柏ケ丘公園の陸上競技場横
1 来歴
詳細は不明だが、美幌アイヌ(ビホロアイヌ)の中心的な土地であった。霊地であるとも、見張り所であるとも、中心的な居住区であるともされる。
周辺には他にもエンカルチャシ、エエンチャシ、ピラチャシなどのビホロアイヌのチャシが存在していたとのこと。
このチャシの特徴は、その別名から人工の丘であるとみられること。
現地の解説板によると「割石を粘土でこねあげた(通称アイヌコンクリ)」であり、「年を越すと悪い神がつくとの信仰から、一年で作り上げた」ものであるとのことである。
記述の通りとするとかなりの土木量であり、美幌アイヌの勢力の大きさを感じさせる遺跡であるといえる。
2 構造
人工的な丘である可能性がある。
「日本城郭大系」(参考 ※)によれば、「昔日の景観は失われているが、かつては競技場の部分にクランク状の堀(幅約五m、深さ約二m)があったといわれる。かつての規模は、チャシとしては最大級で、この地方の中心的存在であったものと想定される」とのこと。
3 状況
柏ケ丘公園の陸上競技場の脇に残され、遺跡碑などが建っている。
4 特徴
人工のものである可能性がある。
他の周辺のチャシと連携し、美幌アイヌの勢力圏の中心として機能していたと思われる。
解説板
リンナイチャシ
別名 ツルライエ(盛り土した砦)
このリンナイチャシは、エンカルチャシ、ピラチャシ、エエンチャシを前衛とした戦略上の要衝にあったといわれ、また前各チャシを一望する要(かなめ)にあたり、美幌アイヌの鎮守の霊地であったともいう。
機械力も労力もなかった時代に、これだけのものを作り上げることのできたということはまことに驚嘆に値する。アイヌは物を造るには決して年越しをしない。年越しをすると必ずウエンカム(悪魔の神)がつくという信仰があるからである。
たった一年で、堅い安山岩の割石を粘土でこねあげた(通称アイヌコンクリ)この巨大な構築物は、単なる見張りの砦であったか。敵襲にそなえた堅固な砦であったろうか。学術的にも大きな意義を持っている。
それにしても、このチャシは、ビホロアイヌの縄張りの偉大さを示しているといえるだろう。
その他の写真
周囲の状況
柏ケ丘公園内には、美幌町文化財の「ベニバナヤマシャクヤク自生地」が存在する。6月ごろには、鮮やかなピンク色の花が咲くとのこと。
個人的回想
人工の丘を築いたチャシ。解説板にもある通り、一年で築いたとなるとなかなかの土木量です。
なお、解説板に出てくる「年越しをするとウエンカムイが憑く」という信仰、浅学な私はここリンナイチャシでしか見た記憶がないです。美幌周辺の局地的な信仰なのでしょうか。
また、同じく解説板にある「通称アイヌコンクリ」についても、他では見られない記述な気がします。「アイヌ コンクリ」で検索すると、ウポポイの前のコンクリート構造物(当然、遺跡でもなんでもない)しか出てこない(涙)
このあたりは引き続き調査です。
参考文献
・「日本城郭大系 1」 87頁 (新人物往来社 昭和55年)
外部リンク
・「美幌町の文化財」(美幌町HP) ―ベニヤマヤマシャクヤク自生地について記述あり。リンナイチャシについては記述無し。