くま城戦軍研 ―熊代城砦戦国軍事研究所

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スズメノコビエ(コド)

実を食用可(インドにおいて雑穀として利用) ※日本では野草
イネ目イネ科キビ亜科スズメノヒエ属

スズメノコビエ(画像はwikipediaより。wikipedia commonsの指針に従い利用しています。)

1 概要
 旧世界全体の熱帯域、オーストラリアなどに広く分布する植物。
 日本では全く利用されないただの野草だが、インド及びその文化圏では雑穀として栽培され、「コド」「コドミレット」(millet=穀物)などとして食されている。(「コド」にはシコクビエなども含むため、全てがこの種ではない)
 一方で脱穀に手間がかかったり部位に毒性を持つなどの欠点を持つ上にカロリーには乏しく、インド文化圏以外では全く見向きもされていない。
 しかし、間違いなく西日本各地に大量に生えており(おそらく戦国時代には今より生息域が広い)、そしてちゃんと処理すれば穀物として食べられる。

2 伝来等
 日本では農地以外に自然に生えているため、故意に持ち込まれたとは考えずらい。自然に在来しているか、あるいは他の植物に付随して持ち込まれたものであろう。

3 生息条件
 日本では、東海以西の本州、九州、四国、南西諸島などに自生。
 湿潤の適応幅が広い上にかなり痩せた土地でも育つため、荒れ地や草地、疎林等ではもちろんのこと、畔や河原などでも育ち、場所によっては唯一の大型植物となっていることも多い。
 暖かい土地ではより生態豊かで、小笠原諸島では群生が見られる。
 インドでは雑穀の一つとして栽培しているが、施肥も少なくてよく、灌漑施設も要らない栽培が容易な作物であるとともに、他の作物(稲など)を水田で栽培する際にも雑草として生える。

4 植物特徴
 丈は40~80cmほどの直立で、緑色の小穂(花を含む)を2~3列並べて付ける。この小穂は熟すると茶色い穎果(種実)となり、落実する。
 この頴果を食するのだが、殻はとても丈夫であり、最も脱穀が大変な穀物ともされている。食用とする場合は穎果ごと蒸し、乾燥させる「バーボイルド法」などが用いられる。
 栄養としては、高タンパク低脂肪で食物繊維が豊富であり、B6などのビタミンやカルシウム、鉄などのミネラルを豊富に含んでおり、現在の欧米では健康食品として人気がある。逆に言えばカロリーに乏しく、主食穀物としては物足りない。手間の割には栄養価が低いことが、日本等では食されていない理由であると思われる。
 また、家畜の食料としてもインド、アフリカなどでよく利用されている。この際、後述の毒性を、特に葉を食べる牛なども受けることがあるので注意が必要である。

5 利用状況
 海外では食用とする。
 インドをはじめ、インドネシア、フィリピン、ネパール、タイ、ベトナム、ミャンマー等、また東アフリカでは雑穀の一つとして栽培されることもある。インドでは紀元前1000年ほどから栽培されていたと考えられる。
 収穫した穎果を脱穀して用いる。インド文化圏では臼などで粉末化して利用することが多い。コド粉を水で練り、蕎麦掻(そばがき)のように食べるのをネパールでは「ディロ」と呼ぶ。一方、東アフリカではソルガムなどと同様に炊いて、あるいはそのまま粥にして食する。

6 注意事項
 稀に殻や葉に毒性を生じることがある。穀物を長期間寝かせる、または水牛の糞の中に一晩おくなどすると毒が抜けるという。
 有毒化する機序は不明で、大雨の際に植えると有毒化するともいう。一説にはコウジカビが生産する毒であるという説もあり、そうなると日本での食用の際には注意が必要かもしれない。

7 戦国利用メモ
 日本中にごくありふれた、雑草ですらない「野草」である。特に戦国時代においては、今以上にあちこちで見ることができる野草だろう。だが、インドでは立派に食用として栽培している植物であり、食物としては活用できないこともないはずである。特に、南方に進出する際には知っておいて損はない。小笠原諸島などの離島では主食にもなり得るはず。
 しかし毒がコウジカビ由来というのが事実であれば、日本では食べずらいかもしれない。


外部リンク
・「Paspalum scrobiculatum」「スズメノコビエ」(共にwikipedia)