くま城戦軍研 ―熊代城砦戦国軍事研究所

受付(ホーム) ・事務室
・城郭研究室 城メモ
・戦国研究室 地域情勢 人名名鑑
 ー基礎資料 農業 料理・加工食品
資料室

ルタバガ

(スウィード、スウェーデンカブ、カブハボタン)
根を食用(飼料利用) ・葉、茎も食用(飼料利用)
フウチョウソウ目アブラナ科アブラナ属(「セイヨウアブラナ」の一種)

1 概要
 姿形は「蕪」と似ている(ただし色は黄色い)が別種で、セイヨウアブラナのうち根が肥大化する種が選別されたもの。欧州では人気があり、特に寒冷地での栽培種としては人類史上でも屈指の優良作物である。
 他の作物が育てられないような寒冷地でも育ち、地上部分も可食であり根部のカロリーも高い。発育も早く三か月ほどで収穫可能、根部は長期保存もできると救荒作物として優秀である一方、優秀過ぎるが故、ドイツでは貧困の象徴となってしまってもいる。
 日本では在来種の蕪が美味しかったために食用としては定着せず、家畜飼料としてわずかな生産に留まっている。

2 戦国時代
 スウェーデンですでに自生しているかもしれない。

3 日本伝来前略史
 北ヨーロッパなどを原産とする「セイヨウアブラナ」の一種。
 セイヨウアブラナは菜種油の原料として育てられた。
・17世紀
 1620年にはスウェーデンにおいて自生していたとされ、各地に広まっていく。特に寒さに強いことから北欧ではメジャーな野菜となっていく。
 また、カロリーが高く収穫性に優れることから、特に冷涼な地域において蕪と同様に家畜飼料としても広まり、輪作に組み込まれた。
 ロシアや北米にも広まっていく。

4 日本伝来後略史
 正式な伝来は明治時代だが、北海道にはそれ以前に北方交易を通じて渡来していた可能性もある。
・明治時代
 アメリカから伝来、寒冷地に強い農作物を探す中、他の植物とともに北海道で育てられた。しかし、日本伝来の蕪と違い独特の味があり、黄色など色味も悪いために食品としては受け入れられず、発展しなかった。
 寒冷地における収穫性の高さから、牛馬の飼料としては価値が認められ、現在でも北海道の一部で栽培されている。
・第一次世界大戦「カブラの冬(wikipedea)」
 第一次世界大戦前、ドイツは食料品の多くを輸入に頼っていた。
 開戦後、戦況が長引くにつれ、禁輸と海上封鎖及び軍事への資源集中投入の影響から食糧事情は悪化し食糧危機となる。じゃがいも入りのパンなどが配給されるようになるがそれも滞っていき、人々は庭や公園を耕し(「クラインガルデン」)、穀物を要する豚を殺し、スズメやカラスも食用にされた。
 ルタバガは当時のドイツでは主として家畜飼料として育てられていたが、収穫性の高さから食料として積極的に栽培されるようになり、ドイツ人はルタバガの配給によって食いつなぎ終戦を迎えた。
 この食糧危機は「カブラの冬」と呼ばれ、その後は苦しみを思い出させることからか、ドイツにおいてルタバガは生産量も減り、食べ物としての人気も凋落していった。

5 栽培
 育て方は蕪に似ている。栽培は容易で、とにかく寒さに強い。
 三か月ほどで収穫できる。霜にあたると甘さが増すことから、秋に播き、冬に収穫するのが良い。
・栽培地域
 北海道・東北で栽培可能。国外では、カムチャツカやアラスカといった極寒の地でも栽培可能である。
・栽培注意事項
 連作障害あり、1年あける必要がある。
 虫がつきやすい。

6 食品特徴
 茎葉、根部ともに食用とする。特に根部は冬に収穫でき保存性に優れることから、寒冷地の冬季の食料として有用である。
 根は蕪に似ており、繊維が緻密で、蕪よりも煮崩れしにくい。蕪に比べて独特な味があり、「ジャガイモとカブの間の味」などと表現される。
・栄養素
 ビタミンC、食物繊維などを多く含む。
 根菜としてはカロリーが高いほう。

7 文化
 ハロウィンの「ジャック・オー・ランタン(wiki)」は現在はカボチャで作っているが、元々はカブやルタバガをくりぬいて作られていた。

8 戦国活用メモ
 戦国時代にはまだ世界にもあったかどうか微妙、日本での栽培実績も皆無に近い野菜。
 だが、他の野菜が育たない寒冷地でも栽培し冬季の食料とできる有用性、第一次世界大戦のドイツ人を救った収穫性は特筆すべきものである。
 特に北海道、さらにその北方へと進出するならば、厳しい極寒の大地で生き抜くためのカギともなりうる野菜であるといえる。


外部リンク
ルタバガ(wikipedia)
カブラの冬(wikipedia)