関連項目:農作物「里芋」
1 概要
戦国時代の戦場で活用された戦場携行食レーション兼ロープ
里芋(サトイモ)の茎、「芋茎(ずいき、いもがら)」を縄状に編んだものを、味噌で煮しめたもの。即席の味噌汁として食する。
戦場携行食品を兼ねる縄として利用され戦場を陰から支えた。
その状態でもロープとして利用でき、またかじって小腹を満たすこともできる。
本格的に食する場合には、刻んで鍋で煮込むと、味噌が溶け出すとともに芋茎も柔らかくなり、そのまま芋茎を具にしたみそ汁が出来上がる。
開発の時期は不明だが、戦国時代初期には既に一般化している。
2 戦場での利用
戦場へは、腰に巻き付けるように携行したり、荷縄に利用したりして携行した。江戸時代にまとめられた「雑兵物語」から、当時の利用状況を抜粋する。
(馬隊が運んできた食料を消費し、荷物が空になった馬が出た状況で)
俵をゆわえつけておいた荷縄や、(略)捨てないでちゃんとくくりつけておけ。荷物をしばっておいた縄は里芋のくきをよく干して縄にないあげ、味噌で味をつけて煮てから荷縄にしてきたから、その縄をきざんで水にぶっこみ、火にかけてこねまわせばちょうどいい味噌汁の実になるべいぞ。(参考※1)
戦国後期になると雑兵の装備として鉄製の「陣笠」が定番となり、これをひっくり返して鍋として調理に使っていた。
当時の携行食料は、蒸した米を干した「糒(ほしいい)」や玄米を焼いた「焼飯(やきめし)」が多く、簡単に調理できる味噌汁は重宝したことだろう。もちろん、目端の利くものは行軍中にも食用になる葉や木の実などを採り、さらに充実した味噌汁にしていたものもいるだろう。
3 製法
芋の茎を茹で、皮をむいて中心部を利用する。
よく乾燥させ、縄のようにない、味噌で煮しめて乾燥させる。
味噌以外にも酒や出汁などを加え、味を調える例もあった。
4 食品特徴
芋茎は食物繊維が豊富なほか、多くのミネラルやビタミンを含んでいる。
一方でカロリーは低く、これだけで生きていけるようなものではない。
5 戦国活用メモ
戦国時代ではすでによく利用されているレーション。縄としても活用でき、戦場では活躍していたとみられる。一方、所詮はおかずが一品増える程度の食品でもあるので、過信は禁物ではある。
芋茎そのものも乾燥すればかなりの長期保存が可能であり、保存食としてのポテンシャルは高い食品である。
参考文献
※1 「雑兵物語」67頁 (かもよしひさ、講談社、昭和55)
内部リンク
・農作物「里芋(サトイモ)」