くま城戦軍研 ―熊代城砦戦国軍事研究所

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パンノキ

実を食用、樹木としても有用
バラ目クワ科パンノキ属

パンノキ。(wikipediaから引用。wikipedia commonsのポリシーに基づき引用しています)

1 概要
 熱帯地方で育てられる樹木。ジャックフルーツなどと近縁。
 でんぷんを多く含む多数の実をつけることから「主食のなる木」として南洋の島などで広く利用されてきた。木材としても樹脂源としても有用で、まさに南洋の人々の生活を支えてきた植物の一つである。
 ニューギニアやフィリピンなどで育てられる、原種に近い種ありの「タネパンノキ(ブレッドナッツ)」(wiki(en))と、ポリネシアで改良されたとみられる種なしの「タネナシパンノキ(ブレッドフルーツ)」(wiki(en))に大別される。
 種子で栽培できる他、種の無い品種でも根を傷つけて「蘖(ひこばえ)」を発生させ、それを移植して増やすことができる。人為的に太平洋上の各地に広がっており、古代の人たちが洋上を広く移動していたことを示す証左となっている。

2 略史
 元々は種がある「タネパンノキ」が原種とみられ、原産地はニューギニアかインドネシア、フィリピンあたりと推定されているが、有史以前から人為的に広まっており、断定は困難。
 広く大洋に漕ぎ出て生活範囲を広げていった東南アジアやメラネシアの人々が、バナナやココヤシなどの他の有用植物とともに伝播したとみられる。
 紀元前から時間をかけて南洋に広がり、10世紀ほどにはミクロネシアの東端ラパ・ヌイ(イースター島)から西はインド洋を越えてマダガスカルまで広まっていた。
 時期は不明だが東のポリネシアで種が無い品種が開発されたとみられる。
 その後、大航海時代後には中米やカリブにも移入され、現代でも熱帯地方で広く栽培されている。

3 栽培条件
 成育の最適温度は20~30℃と高めであり、熱帯地方で栽培されている。
 日当たりがよく水はけの良い場所が栽培に向く。塩害に強く、サンゴ礁土壌でも育つのも南洋で発展した要因の一つ。
 10mを越える樹勢を持つことから、熱帯では日陰を作る樹木としても用いられている。水やりは頻繁に必要な植物だが、降雨が豊富な地域では農業的な作業はほとんど必要ない。
 年間を通して実をつけるが、時期によってばらつきが大きいのが難点。

タネナシパンノキ(ブレッドフルーツ)の断面。「wikipedia」から引用。この画像はパブリックコンテンツとなっています。

4 食品特徴
 グレープフルーツほどの大きさの果実を食用、収穫量はとても多く、一本の樹が年間200個ほどの実をつけることもある。
 栄養としては、熟した実にはデンプンが多く含まれ、主食として十分なカロリーがある。焼いたパンやジャガイモのような風味を持つ。
 収穫時期に偏りがあるため、実を発酵させて保存するなどの工夫がなされる。
 一方、未熟な実も糖分などを含んでおり、十分食用になる。こちらは芋のように揚げたり、ココナッツミルクで煮込むなど調理して食べる。
 また、タネパンノキの種も食することができる。栗のような味がするという。

5 文化
・カヌーへの利用
 木全体から樹脂が得られる。この樹脂は木製品に防水性を持たせる効果があり、南洋のカヌー文化の発展に大きく寄与している。
 パンノキ自体も大きく育つことと、比重が軽い割りに丈夫であることから、カヌーの材料に適しており、南洋特有の外洋用カヌーにも広く用いられている。

6 戦国活用メモ
 育てば農作業はほぼ不要ながら年中実をつけ、その収穫量も栄養も十分という奇跡的な果樹であるが、前述のとおり、日本で育てることは難しい。
 だがその有用性から南方に進出するつもりならば知っておきたい植物の一つ。特に小笠原諸島や南西諸島などでは育てることができるはずであり、有用な食用源となり得る。
 マリアナ諸島のチャモロ人など、南洋の人たちと友好を結べば種なりひこばえは分けてもらえることだろう。


内部リンク
・地域情勢「マリアナ諸島