関連項目:基礎資料「山葵(わさび)」
1 概要
わさび(基礎資料)の葉や茎、根などを塩漬けにし、酒粕で漬けたもの。
葉や茎にも含まれる辛味を活かした料理である。
江戸時代、宝暦年間に田尻屋利助が開発したとされる。明治時代に東海道本線の静岡駅(wiki)が開業すると、田丸屋(田丸屋本店HP)は木箱に詰めたわさび漬けを車窓から販売。静岡駅の名物となり、現在に至るまで静岡の代表的な土産としての地位を築いている。
2 開発前前史
わさびは茎根を香辛料として利用するが、葉や地上茎にも辛みが含まれている。江戸時代前期に独占的にわさびを栽培していた安部川上流の有東木では、わさびの葉柄を糠味噌漬けにして食していた。私見だが、幕府は有東木のわさびを保護する代わりに製法も門外不出として独占的に入荷していたが、主用途となる根茎以外は地元で好きに食していたのではないだろうか。わさび栽培に特化していた有東木の住人にとって貴重な野菜であったかもしれない。
宝暦年間(1751~1763)、この地域で味噌・醤油を商っていた田尻屋利助は、有東木のわさびの漬物を知り、これを改良した粕漬けを考案し「わさび漬け」と名付けた。商品としても販売したが、本業の味噌・醬油の商売の片手間程度のものであったという。(参考※1)
3 開発後略史
細々と地元で作成されていた「わさび漬け」に一大転機が訪れたのは、明治22年(1889)東海道本線静岡駅(wiki)の開業による。
明治8年に静岡で漬物屋「田丸屋」を興した望月虎吉は、静岡駅内でのわさび漬けの販売権を獲得。木製の化粧箱に詰めたわさび漬けを車窓を通して乗客に販売。これが旅行客に好評となり、静岡の名産品として定着した(参考※1)。
現在に至るまで、静岡土産の定番としての地位を保っている。
4 製法
わさびの根茎、葉、茎などを用いる。
材料を塩で下漬けし、水気を絞った上で味付けした酒粕(現在では砂糖や味醂、酒などを加える)で漬ける。
5 戦国活用メモ
わさび漬けが開発されたのは江戸時代中期の宝暦年間とされるが、味付けした酒粕に漬けるという単純な製法で、再現は容易だろう。酒粕も余る処では余るものだし、わさび栽培を本格化させた時には余りがちとなる葉や茎も活用できる。
それなりに日持ちがする、土産物として使える食品は自分たちでの食用のみならず外交などにも重宝しそうである。
参考文献
※1 「ワサビのすべて」 28頁 (木苗・小島・古郡 学会出版センター 2006)
外部リンク
「山葵漬け 静岡県|うちの郷土料理」(農林水産省HP)
「田丸屋本店 わさび漬けの歴史と田丸屋」(わさび漬けのトップブランド)
「わさび漬け – Wikipedia」
内部リンク
基礎資料「山葵(わさび)」