くま城戦軍研 ―熊代城砦戦国軍事研究所

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沢庵漬け

関連項目:農作物「大根(ダイコン)

出典:農林水産省HP「うちの郷土料理|いぶりがっこ

1 概要
 「大根(ダイコン)」の糠(ぬか)漬けを特に沢庵漬けと呼ぶ。
 野菜を他の食物、特に穀物の残骸と漬け、乳酸発酵させ味を楽しむととともに長期保存する「漬物」という文化は奈良時代には開発されており、平安時代には粕漬け(糟漬け)が発展する。一方、糠漬けに関しては、そもそも中世以前には精米自体が稀だったこともあり登場は遅れた。
 江戸時代初期に大根の糠漬け「沢庵漬け」が開発されると、白米を食する文化の広まりに合わせて爆発的に流行。その味と便利さから、現代にいたるまで日本の代表的保存食、代表的おかずとして親しまれている。

2 開発前略史
・奈良時代
 須須保利(すずほり)という、穀物を砕いた床を用いた漬物が記録に残る。
・平安時代
 大根は食材として定着しはじめており、煮物や焼き物として食卓に登場する。
 比叡山延暦寺に住した名僧、慈恵大師良源(912~985)が漬物「定心房」を開発し、以後の比叡山で細々と食べられていく。大根漬けの開祖、沢庵の先祖とされることもあるが、当時の定心房は小柄な大根を藁と塩で漬けたもののようであり、沢庵漬けとは異なると考えられる。
 公家社会においては保存食を贈りあう文化が定着するが、珍重されたのは「ナスの粕漬け」であった。
・室町時代
 野菜の粕漬けは更に進展し、「守口漬」などの商品を生む。
 酒を造る際に生産される「酒粕」と違い、当時はまだ精米しないのが普通のため「糠」はあまり生産されておらず、糠で野菜を漬けるという料理が広く定着するのはまだ先になる。
(戦闘時の糧食をはじめ、白米も一部では食されていたが、高級品扱いされており、一般的ではない)

wikipedia」より。wikipedia commonsの指針に従い利用しています。)

3 開発
 開発には諸説あるが、精米し白米を食する文化が発展するうち、大量に生産されるようになった「糠」が用いられ開発されるのは自然な流れであったと考えられる。
 一説には臨済宗の名僧、沢庵宗彭が開発したとされる。
 寛永6(1629)年、「紫衣事件(wikipedia)」に関連し、出羽国上山に流された際に、付近住民から大量のダイコンを差し入れられたために保存食として作ったという。また、沢庵が江戸に戻った後に創建した東海寺(現在の品川区)で食されており、これを食べた徳川家光が気に入り、「名前がないなら沢庵漬けにしよう」と命名した、という説がある。
 どちらにしても、江戸初期のこの時期までには同様の食べ物は開発されていたようである。
 特に江戸では、初期から白米文化が発展し、糠が大量に発生した。(そのため「江戸煩い」という栄養不足も発生したが)このため、特に江戸で大量に作られるようになり、その有用性から発展したと思われる。

4 開発後略史
 現在に至るまで、保存性の高い簡単なおかずとして日本の食卓に絶対的な地位を築いている。しかし、現在では古来の製法(後述)と違い、日に干さずに塩押しで水を抜いたり、ウコンなどで黄色い色を付けたりという商品が目立つ。

5 製法
 大根を日干しし、しなびた大根を糠と塩で漬ける。米糠と共につけることで、糠の麹菌によりデンプンから糖分が生まれ旨味が増す。また、枯草菌の作用により黄色に変色する。数か月漬けると出来上がり。

6 食品特徴
 糠を落としてそのままおかずとして食べる。古いものは発酵が進み臭気を発することがあり、その際は塩抜きして焼くなどして食べることもある。

7 派生食品

・いぶりがっこ
 秋田県名産の燻した沢庵。日照時間が短いことから十分に天日干しができなかったため、囲炉裏の上につるして乾かした大根を用いて漬けたもの。独特の燻製香を持つ郷土料理として、現在に至るまで愛されている。
・紀の川漬
 紀の川周辺に残る沢庵漬けの一種。米糠ではなく、小麦ふすまで床を作って漬ける。
・籾殻漬
 太平洋戦争期、米糠が貴重となった時代には、籾殻をもって沢庵を漬ける試みがなされたこともある模様。味などは未詳である。

8 戦国活用メモ
 梅干しなどが陣中食として大活躍していた戦国時代だが、沢庵はまだ開発されていないと考えられる。
 保存食品の王様として、沢庵を開発すれば大いに利用できると考えられる一方、戦国時代はまだ精米することが一般ではなく、糠が手に入りずらい環境ではあるだろう。(米糠は食用だけでなく、石鹸の替わりとしても有用であるため、文化的な生活のためには確保したいところではある)


外部リンク
沢庵漬け(wikipedia)
春雨庵(山形県観光公式サイト)